ちかちかと真夏の太陽がアスファルトに反射する。


少しヒールのあるサンダル、クリーム色のTシャツ、一目惚れで買ったジーンズ。
彼が好きそうな大きめのピアスと、革紐のペンダント。
それらを揺らしながら、ゆるゆると坂道を下る。


夏は好きだ。


きらきらと光る太陽が、すべてを照らしてくれるから。
焼け付くように降り注ぐ強い日差しも、ベタつく肌も、さほど気にならない程に。
日傘も差さずに、太陽の光を全身で浴びて歩くと、自然と頭がクリアになる。

汗となって放出出来ない熱は私の中にずっと残って、くらくらする。



眩しい笑顔に会えるのは、いつだろう。あと何分後だろう。


一瞬、強い光が視界に映った気がした。
響く車のクラクション、耳元で奏でられる静かな音楽。
それらが一瞬にして止まって、私のすべては彼でいっぱいになる。


視界に映る、彼の笑顔。
優しく細められた明るい茶色の瞳と出会う。
「おはよ。」
「ん、おはよ。」

たった数秒で奏でられる透き通った硝子のような声色は、それだけで私の中を満たし
一瞬で終わらない優しい瞳は、いつまでも私の中から消えず
そのたびに彼が私の中に浸透し、彼なしではいられないと錯覚する。

さようなら、を言う日が来るのだろうか。
なんて悲しいことは考えないことにしたのは、いつからだったか。
いつまでも、彼は私の隣にいるのだと根拠もなく信じていられたのは、いつまでだったか。




ふ、と隣を見ると彼もまたこちらを見ていて、心臓が大きく跳ね上がった。
「どうしたの?」
声にならない私の言葉は、ゆるく首を振るという動作に変わった。
彼はただゆるく微笑って、ひとつ頷いた。




さようなら、を言う日は来なければいい。







別れが来るのなら『またね』とそう言えればいい。





(君が想像してること、俺は現実にしたりしない)