冬は寒いから、苦手だった。
冷たい風はセットしたお気に入りの髪型を崩す様に感じられるし、
手はかじかんで、i podが上手く動かせないし、
良いことなんて、あまりない気がする。
かといって、格別に夏が好きなわけではなかったけれど。
(さむ…っ)
一際冷たい風が俺の真横を通りすぎた。
セットした髪をとっさに押さえる。
「おーはよ。」
ぽん、と肩を叩かれて振り返ると、まるで春みたいな笑顔を浮かべたがいた。
「おはよ〜。」
「あはは、水谷。まーた髪の毛おさえてる。」
けたけたと無邪気に笑って、俺の髪の毛を撫でる彼女の指があまりに細くて長くて、思わず見惚れてしまう。
自慢の髪、だもんね?
なんて悪戯に笑うその姿に、少し胸が高鳴るのを感じた。
俺は不器用だから、それを上手く隠すことなど出来なくて、思わず身を強張らせてしまう。
「…なに、どーしたの?」
「えぇっ、いや…べ、別に…。」
「そう?」
ふ、と彼女の全身を捉えると、あまりに無防備な服装に素っ頓狂な声が俺の喉からこぼれた。
「わ、ビックリした。なに、どうしたの?」
「や…その、…寒くない…?」
そうかな?と言って彼女が自分の全身を見直す。
藍色のショートパンツに、黒のロングブーツ。
少しヒールのあるブーツは、元から綺麗な彼女の足をより一層長く細く見せていた。
タイツは履いているけれど、タイツから透けて見える肌の色がいやに扇情的で。
(…俺ってば欲求不満なのかな?)
なんて自分の浅ましさに少し苦笑した。
「寒くないよー?タイツ履いてるし、コートも着てるし。」
「…でも、マフラーしてないじゃん?」
彼女の細い首や鎖骨が見えるその姿が、またひどく艶やかで、少しだけくらくらする。
「時間なくて、焦ってたら忘れちゃったの。」
へらりと笑い、「でも平気だよ」なんて言ってみせる彼女に、俺は自分のマフラーを取って巻いて。
驚いた彼女が小さく声をあげたのと同時に、言い訳の言葉を口にしてみるのだけれど、焦りすぎてしまったのか、どもってしまった。
すると彼女はくすりと笑い、ありがとうと呟くと、首に巻かれたマフラーに顔をうずめ、息を零して笑った。
「水谷の匂いがする。」
(やっぱり俺って欲求不満かも。)
「あ、のさ。」
「うん、なぁに?」
「その、ショーパンって…」
「だから、寒くないよ?」
「…ちがく、て。その…エロい、なぁ…と思うわけです、よ?」
「…ばっかじゃないの!?」
(だって絶対領域だよ?!)
Crazy crazy...