彼女の細い指が、綺麗な足が、透き通るような髪が。
俺の脳裏にこびりついて、離れないから、俺は気が狂いそうなほど、彼女に焦がれてしまう。
「泉。」
「ん、なに。」
「…や、寝てるのかと思ったから。」
起きてたのか、なんて少し残念そうに呟いて、ひとつ悪戯に笑う。
細い指で、顔にかかる前髪を耳にかけるその仕草に、俺の体はずくりと疼く。
目が離せなくなる、彼女のひとつひとつの動作に。
「なに?」
「え?」
「いや、こっち見てるから。私何かした?」
「いや…、なんでもねぇ。」
「そ?」
そういうと、彼女は俺の隣の席に座り、おもむろにポケットからイヤホンを取り出して耳につけた。
黒いイヤホンが、彼女の白い肌に映える。
ああ、どうしよう。爆発しそうだ。
ふ、と手が伸びた。自分でも気付かない程、無意識に、彼女の髪を己の指に絡ませて、彼女の耳からイヤホンを取る。
彼女が、ちらりとこちらを見やる。
「なに、どうしたの?」
そう問われたことで、やっと自分が何をしていたかに気付くのだけれど、自分でも抑えきれなかった衝動に動揺してしまい
どう答えていいのかわからなかった。
「や…、えと、何聞いてンのかなぁ、と思って…。」
「泉も聞く?」
「おう。」
先ほどまで彼女の耳にはまっていたイヤホンを自分の耳にはめる。
女性シンガーの、静かな歌声が耳に入ってきた。
こういう歌が好きなのか、なんて遠くで思う。
隣で彼女は頬杖をつきながら、ゆっくりと目を閉じた。
いつまでも消えない衝動を、抑えようとする度に、胸がちくちくと痛んだ。
いっそ、爆発させてしまえば。