言いたいことは沢山あった。
心の奥底に仕舞い込んだ幾つもの想いは、全て息となって体外へ出ていっているけれど。
それでも出し切れずに、胸でくすぶっている想いは、どうしても外へ出るのを厭がって何時までも何時までも、それこそ永遠と思われるくらい強くつよく私の中で渦巻いている。
外は曇っていた。どんより、とまではいかなくとも、太陽は確実に薄い雲に覆われて、ちいさく光を放っている。
まるで、私の想いのようだ。
(私は何がしたいのだろう。)
ふ、と視界を遮ったおおきな手のひら。
驚愕のあまり小さく声をあげると同時に頭がクリアになる。現実へ引き戻される。
「なにボーっとしてんだよ?」
くすりと笑ったのは、同じクラスでひとつ年上の浜田だった。
「…ん、色々かな。」
へらりと笑った私に、浜田は「そっか?」と微笑んだ。
「…う、ん。色々、だよ。」
小さく呟くと、浜田が小さく笑みを零した。
私はそれを見逃さなかった、だからと何かをするわけでもないのだけれど。
「…はさ、そうやって色々隠して、抱え込んで。」
浜田がぽつりぽつり、とぎこちなく言葉を並べていく。
ゆっくりと紡がれる言葉は、濁りきった私の脳に染みこんでいく。
「それは、疲れない、か?」
首を傾げ、訝しげに、問うてくる浜田の瞳は少し暗い。
「…抱えてないもん。」
「嘘つけ。」
はは、と声をあげた浜田はひどく大人で、唇を尖らせた私はひどく子供で。
私の中に残って残って、いつまでも冷めない熱を帯びた想いが、喉まであがってくる。
「…わけもなく寂しい、のは、」
「…ん?」
「きっと、誰にでもある、んだよね?私だけじゃ、ないんだよね?」
人間だからな。
そう呟いて笑った浜田は、ひどく暗くて寂しくて悲しかった。
(やさしい子守歌はまだ歌えないけど)