「決めつけるの、やめたら?」
鋭く突き刺さる言葉。
「…だって、」
「だっても、クソもねぇの。」
「…だ、」
「ホラ、だって、じゃねぇって。」
困った風に微笑う彼が、酷く憎かった。


だって、じゃない?
じゃあ、なんて言えばいい?
私には出来ない、私に出来るはずない、私なんて所詮、無力な生き物なのだ。
私が何をしたところで、何も変わらない。
そんなこと初めからわかっているのだ。何度やっても、何度やっても、何かが達成出来た試しがない。

自信なんて持てるはずがない。
私はこの世界で、底辺にいる人間なのだ。

(そうして自分をどん底まで貶めれば、人に見下されたり何かに躓いたとき、楽でいられる。)


はさ、そうやって自分を過小に見過ぎてるんだよ。」
(…過小もなにも、私には何も出来やしない)
「何か始める前に、やめるなよ。やってみてから決めろって。」
(やってみて駄目だったことしかない)
「それで駄目だったら、何で駄目だったか考えてさ。」
(もう何度も考えて、それでも駄目だった)
「そうすれば、誰だって変われる。」
(変われなかった、私は)
「次がない、なんてことはない。」
(次も失敗するのが怖いから、出来ない)



彼が紡ぐ言葉に、心の中で返事をする。それはまるで自問自答しているかのような錯覚を起こした。
もう何度もしてきた、自分への問いかけと、それへの応え。




胸が詰まる、喉が閉まる、声が出せなくなる。




「…っ、」
「どした?」
「…………」
ただ無気力に首を振ることしか出来ない。

「…お前はさ、人に寄りかかることを知らないんだな。」
「…?」
「全部一人で抱え込もうとしてる、だから躓くんだよ。」

(じゃあ誰に頼れって言うの?)
「…俺じゃだめなのか?俺じゃお前の支えにはなれない?」
(信じられない、そんな言葉)
(頼ってもいいの?重たくないの?)


(やっぱり出来ない、きっと頼ったら私から離れていく)




「…な、無理するなよ。」
「…む、りだよ。」
「何が?」
「…何が無理なのかわからないよ…」
「…自分が辛いって感じたら、それは無理してるんじゃないか?」
「…そしたら、私はいつも無理してることになる…」
「っ、それだけが切羽詰まってるんだよ…。」


酷く苦しそうな彼の声は、私の脳天に響いた。
どうして、彼がそんな声を出すのか。悲痛にまみれた切ない、声を。



わからなかった。
浜田のことも、私のことも。
何がどうなって、どこから間違えて、私はここまで来たのだろう。
道を踏み外したまま、私は進んでいるのではないか。



途方もない不安が、痛い。

「もし、が消えそうなくらい辛いんだったら」
「俺が、の辛さを受け取るから」
「じゃないと、俺だって辛いよ…」

「一人で抱えるなよ…っ」



涙でにじんだ声色が、私の涙腺を刺激する。
どうして、優しい。
どうして、苦しい。




どうして、素直になれない。




「辛さを一人で抱えることがどれだけ苦しいかは、俺は知ってる…。」
「だから、」



どうして、どうして、つらいのだろう。



(差し出された手のひらを、掴めない)